「企業は変人を囲い込め!!」Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋 書き起こし その3

2018年10月19日(金)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋」の書き起こしです。

ソフトウェアエンジニアである中島聡と、マクロ経済学者の井上智洋氏(駒澤大学)が、既に始まっている情報技術の飛躍的な革新が、経済や産業、社会全体に及ぼす影響やインパクトに関して、テクノロジーと経済の両方の側面から議論しました。

「これはもう子供達にも全部滲みついていると思ってます。それは何かと言いますと、人生を何か守りに入っちゃうんですよね。例えば中学生のなりたい職業ランキングって見るとですね、第3位ぐらいに公務員ってのが入ってたりしてですね。素晴らしい公務員のが一杯いますけども、生活の安定のためだけに公務員になるって言う人が増えるような社会ってやっぱり活力ないですよね。ただ、今はそういうことに不況が10年20年続いてですね、どんどんみんなが守りに入っちゃってベンチャースピリッツみたいなものは無くなってしまっているということはあります。」

「日本の会社はもっと変人を囲え、ということを申し上げておりますですね、スティーブジョブスさんみたいなですね、言ってみればものすごい変人な人をですね、最初ATARIでしたよね、ゲーム会社に努めていたんですけど、あまりのも変人すぎてですね、昼間、他の人と働かせておくのは厳しいっていうことで、夜の勤務にさせたりしてですね、そうまでしてでも、変人でですね、全然お風呂も入らなし、野菜しか食べないような、ジョブスって人を一生懸命囲って、その果てにですね、 Apple 社がある」

中島聡(以下 中島):  ありがとうございました。中島です。あのさっき初めてお会いしてお話をした時に、私だいたい日本に来る時にアマゾンで面白そうな本を7,8冊適当に買って飛行機の中で読んだりするんですけど。この前来た時に7冊買ったら、偶々偶然井上さんの本が2冊入っていて。今ちょうどでてきた経済学の話とベーシックインカムの話なんですけど。そしたら今回対談ができるとのことでとても喜ばしく思っています。

で、私色々と質問があるんですけど。まず最初に大分岐の話は私にはすごくすーっと落ちて。先生の本を読んでいる時に大分岐の話が出てきて。最初にこの第一次の大分岐の話が出てきた時に、じゃあ第二の話が出るのかなと思ったら、ちょっと私の予想と違ったんですよ。というのは私はこのSocietyを始めた時にも言ったんですけど、やっぱり日本はそのバブルが崩壊した後の失われた10年20年30年目に入ってますけど一人当たりの GNP が伸びてないんですよ。で、それに対してアメリカは激しく伸びてると。この前日経か何かに出てましたけど、バブル崩壊前の89年度の世界の株価総額トップテンの中の7社が日本だったにもかかわらず、今見ると一社も入ってないと。だから、大分岐の時程の差でもないけど実はその第三次産業革命でも分岐が起こっていますよと。

という話に先生が持っていくのかと思ったらその話はしていないので、まぁいいのかなと思ったけど私は、ちょっとそこは。

井上智洋(以下 井上): そういう意味でいますと、成長率は2%ぐらいに落ち着くという話をしましたが、アメリカがちょうどこの20年間実質成長率2%ぐらいなんですね。で、日本が0.9パーセントぐらいなんですね。で、2%と0.9%ってそんなに差がないんじゃないかって皆さん思うかもしれないんですけども。でもこれが複利的に増えていくわけですから、10年20年経つとかなりの差になってくるというのは確かで。1992年ぐらいですか、日本はアメリカに対して一人当たり所得で僅かながら一回抜いたんですよね。ただ、その後デフレ不況が長く続いたせいで、今一人当たり GDP かなり差をつけられている。片や0.9パーセント片や2%ってことで、かなりの差になっちゃってるということですね。それを指して大って程じゃないですけど、分岐していると言えば分岐しますね。

中島:  まぁ、その分岐してる理由の話が結構重要で。私はその理由が大きく分けて二つあり。一つはまず日本の経営層がやっぱり技術の事が分かっていないんですよ。なんで分かってない人がいつまでも経営層にいるかっていうことすら問題なんだけど、アメリカもやっぱり駄目になった企業はいっぱいあるんですよ。その GM にしろ、最近GEも駄目になってきたけど、IBM にしろ。やっぱり、その経営層がちゃんとテクノロジーをうまく利用して引っ張っていけない企業はダメになっているという意味で言うと日本と同じなんだけど、アメリカの場合はやっぱり企業の新陳代謝も激しいし、人も激しく動くので、そのマイクロソフトだったり、Facebook だったり、Google だったりっていうすごい企業が一気に伸びるので、その駄目になった企業はあるけど全体的に見ると伸びるって事が起こっていると。

でも日本の場合は、やっぱりっぱりそこにもう一つ雇用規制の話もあるけど人が切れない。でっ、その人が切れないってことは結局一人当たりの生産性を上げられないんですよ、企業は。だって、生産性が上がるってのは何が上がるかってなると一人当たりの仕事ができるようになるから上がるんだけど。でも必ずしも売上も上がらないとなると人を切るしかないんだけど、日本の場合は人を切れないから結局生産性が上がらないっていう不思議なことが起こっていると。

で、それプラスその中で日本の場合大企業はなぜだか潰れないんですよね。僕はその政府が結構公共投資で救っているから潰れないだろうと思ってるんだけど。それもあって企業の新陳代謝が起こらないからいつまでもITのことをわかってない経営者が上にいる企業がいて、優秀な人材を抱えているから、こんなことになったんだ。っていうのが、今の話ですけど、私はすごくを思っていて。その辺はどう思われます

井上: そうですね。あのー元々雇用の流動性が日本では確かに少ないって言うのも、もちろん一つ要因としてあるんですけども、そのデフレ不況が長く続くとデフレマインドが身に付いっちゃうんですね。これはもう子供達にも全部滲みついていると思ってます。それは何かと言いますと、人生を何か守りに入っちゃうんですよね。例えば中学生のなりたい職業ランキングって見るとですね、第3位ぐらいに公務員ってのが入ってたりしてですね。素晴らしい公務員のが一杯いますけども、生活の安定のためだけに公務員になるって言う人が増えるような社会ってやっぱり活力ないですよね。ただ、今はそういうことに不況が10年20年続いてですね、どんどんみんなが守りに入っちゃってベンチャースピリッツみたいなものは無くなってしまっているということはあります。ただ、ごくごく最近になってちょっと変わってきたと思ってまして、何かというとうちのゼミ生とかでも三年くらい会社に勤めてから起業したいという学生が出始めていてですね。私は自分のゼミ生からそんなことを言う学生が出てくるとは思わなかったんですね。私なんかもまぁお酒が好きでですね、飲んだくれなんですけども、正直ゼミ生もみんな飲んだくれの集団かなと思ってたんですよ、申し訳ないことに。そしたらもうかなり知的好奇心もあって、今日も4人来ていますけども、かなり積極的に新しい技術とか知識とかを吸収して何かしてやろうという、そういう子たちが最近になってちょっと増えてきたという風に思っていますが、まぁかなりこの20年間、日本は活力を失っているのは確かですね。

中島: まぁその~せっかくだから同じこと言ってしょうがないから、あえて反対するとその第4次産業革命が2030年でしたっけ?ぐらいに起こって大分岐って仰ってますけど、実は三次と四次は僕は連続してるんじゃないかと・・・

井上:  すいません。やっぱりあんまり意見違わないんですけども、あの実は特に最近なんですけども、私はその第一次産業革命と第二次産業革命をセットにして工業革命と呼んでですね、第三次と第四次をセットにして情報革命と呼んでしまっていいかなと思って。まぁどっちも二段階ロケットみたいになってると言うことなんですね。まぁ最初の情報革命の最初の段階で日本はいきなり躓いて転んでしまったという風に思います。それで一回転んだ時にまた立ち上がって追い抜けるかって言った時に、アメリカでも中国でもそうなんですけども、プラットフォーム企業がいっぱい AI に対して投資してるので、第三次で勝てないと第四次でも結構難しいと、私は不可能じゃないと思っているんですが、かなり難しいっていうのが今の情勢だと思うんですが、難しくは無いんですかね?

中島:  余り難しいって言っちゃうと悲観的になるからからあれですけど、その「分岐がすでに始まっているんだよ」と、やっぱり危機感を持たなきゃいけないと思うんですよ。まぁその突然2030年の分岐が起こるんじゃなくて、今既にに起こり始めていて、その差がドンドン開いていくという真っ只中にいる人たちが「今何をすべきか?」って言うのを、このソサイエティはちゃんと考えるべきだろうと。私もその10年前ぐらいまでは何だかんだ言って大きな企業人の偉い人と会って「ちゃんとインターネットの時代に備えなきゃいけませんよ」みたいなことを言ってきたんですけど、結局通じないので、言い方悪いけども彼らを見捨てようと最近思ってるんですよ。でも、しょうがないですよ。そもそも転職したことも無いし、スマホも使えないとか言ってるわけだから、もういいですよ。彼らは。それよりもやっぱり、その一つ下、二つ下の・・・その一回り二回り下の人達が段々気が付き始めているわけですね。そろそろ危ないんだと・・・。ていう人達をサポートしてその人たちが活躍できる舞台を作る若しくは私みたいね私も就職してすぐは NTT に入ったわけですよ。でその瞬間は保守的だったわけですよね、やっぱり早稲田の大学院まで出たんだからアスキー出版みたいな訳のわからベンチャー企業に行かずに、そこいつでも入れるから。でも大学出てすぐにしか入れない NTT 入ろうっていう保守的な思いで入ったんですよね。でも私はあの時にもう僅か1年で辞めちゃいましたけど、それはマイクロソフトって企業がすごい魅力的に見えたからだけど。でも、私はその運がよかったって言えば運が良かったけど、そういうちょっと変わった人間だったんですけど、やっぱもう少しそういう変わった人間を増やさなきゃいけないなと・・・

井上: はい。 それは本当にそう思いましてですね、あの時々、会社でですね、お話させて頂く機会があるんですけど、もうその時にもですね、日本の会社はもっと変人を囲え、ということを申し上げておりますですね、スティーブジョブスさんみたいなですね、言ってみればものすごい変人な人をですね、最初ATARIでしたよね、ゲーム会社に努めていたんですけど、あまりのも変人すぎてですね、昼間、他の人と働かせておくのは厳しいっていうことで、夜の勤務にさせたりしてですね、そうまでしてでも、変人でですね、全然お風呂も入らなし、野菜しか食べないような、ジョブスって人を一生懸命囲って、その果てにですね、 Apple 社があるということなんですが、まあ日本の会社もですね、そこでじゃないにしても、やっぱちょっと変わった人間とかですね、あの変な経歴の人ですね、受け入れるような、寛容さというか、多様性をですね、許容するような体質がないと、なかなか日本の企業も伸びていかないかな、という風に思っています。