Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋 書き起こし その5

2018年10月19日(金)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋」の書き起こしです。

ソフトウェアエンジニアである中島聡と、マクロ経済学者の井上智洋氏(駒澤大学)が、既に始まっている情報技術の飛躍的な革新が、経済や産業、社会全体に及ぼす影響やインパクトに関して、テクノロジーと経済の両方の側面から議論しました。

「常に統合政府で考えないといけないっていうのは一部のマクロ経済学者の中では常識ですね。ただその常識っていうのが、世の中で広く共有されてるかと言ったら全くされていない状況でですね、日本の財務省もそうですけども、マスメディアもですね、財政再建しなければいけないっていうことが話の前提でですね、全ての議論がなされているんで、その前提部分をまず疑うところからやってほしいなという風に思っています。」

「 経済学者の話って、皆さんあんまり信じない方がいいですよ。全て半信半疑で聞いた方がいいと思ってまして、大事なテーマこそがもう意見が真っ二つに分かれるんですね。唯一ほぼ意見が分かれないのは軽減税率ですね。軽減税率はやめたほうがいいっていうのはそんなに多分意見分かれなくて、ほとんどの経済学者があれはダメだよねって言う。なんでかって言うと生活必需品とそうでない物の線引きってものすごく難しくて、ヨーロッパではずっとそれで揉めてきてる歴史っていうのがあるんで、普通にそういうこと知ってる経済学者は軽減税率なんてやるべきではないという意見になるんですがそれ以外の事、消費税増税すべきかどうか、財政再建すべきかどうか、日銀が国債保有したらチャラになるかどうか、これらはもう全部真っ二つに意見が半々ぐらいに分かれちゃうんですね。全くあてにならない集団ですね。」

中島:ちなみに、こういう、今ちょっと違いますけど、中央銀行が国債を買ってると、少なくとも数字上は国の赤字が増え続けるじゃないですか。それはすごく気分的に悪いと。子供達からお金を借りてるんだと言う。でも、実は政府が発行すると、そうならないですよね。まぁある意味に言っちゃえば日銀が持ってる国債はなかった事って出来ますよね数字的には。

井上:  はい、私はそう思ってまして、このグラフがそうなんですが。赤がですね、言わば政府の借金ですということなんです。緑の方のグラフが日銀が保有している国債の残高ということなんですが、これ緑がぐんぐん伸びているわけですね。ちょっと最近買取量を減らしてますけども。日銀が国債を買い取って行くと、赤のグラフに対して緑が追いつく。で、追いついたらどうなるかって言うと世の中にある国債が全部日銀保有になる。つまり日銀と政府をセットにして考えた時には、そういうのですね「統合政府」って言うんですけども「統合政府」っていうのが本当の国なんですよね。要するに日銀って政府の子会社みたいなもんじゃないですか。だったら日銀と政府をですね一体として見てですね、世の中にある国債を全部吸収しちゃったんだったらそれは借金なしって考えてもいんじゃないかっていうそんなことを唱えてる経済学者が日本に私も含めて何人かはいるんですが、主流はそうなってないんですね。財政再建が必要だ!増税が必要!だってことを言っている。
でも今日もちょっとテレビでやってましたけども、その消費税増税するたびにですね、景気が腰折れしてですね、日本はデフレ脱却できなかったっていうことを繰り返しているんですよね。あの3%から5%に上げたのは、橋本内閣の時でしたけども、あの時もかなり景気が悪くなってですね。それで結局、橋本内閣てのは選挙で負けてですね、崩壊しちゃったわけですけども。この前の2014年の時もですね、景気の低迷をもたらしたということなんで。財政再建というのを考えすぎるとなかなかデフレ脱却は実現できないと言うふうに思っています。

中島: でもIMFが相変わらず財政不調だと色々言うじゃないですか。
あれはある意味間違ってる、意味がないこと言ってるという事ですか?

井上:  そうですね。常に統合政府で考えないといけないっていうのは一部のマクロ経済学者の中では常識ですね。ただその常識っていうのが、世の中で広く共有されてるかと言ったら全くされていない状況でですね、日本の財務省もそうですけども、マスメディアもですね、財政再建しなければいけないっていうことが話の前提でですね、全ての議論がなされているんで、その前提部分をまず疑うところからやってほしいなという風に思っています。

中島:これが僕すごく不思議で、コンピューターの世界では割と良いもの悪いものに関しては、例えばね多少の意見の違いは誰でも、java とSwiftとどっちがいいみたいな好き嫌いのことはあるけど、基本的に例えばSwiftと objective C でどっちがいいかって言ったら意見は分かれないぐらいにSwiftが正しいわけですよね。コンピューターの世界では。で、それぐらいの話をしてるはずなのに意外とその政府にも反対意見、先生と違う意見の人がいて、IMFの人にも違う意見の人がいるって言うのはなんか経済の世界っていうのは不思議だなったすごく思いますよね。(経済学者の言うことは聞かない方が良い。唯一意見が分かれないのが、軽減税率はやめたほうがよい!ということだけだ!)

井上:  経済学者の話って、皆さんあんまり信じない方がいいですよ。全て半信半疑で聞いた方がいいと思ってまして、大事なテーマこそがもう意見が真っ二つに分かれるんですね。唯一ほぼ意見が分かれないのは軽減税率ですね。軽減税率はやめたほうがいいっていうのはそんなに多分意見分かれなくて、ほとんどの経済学者があれはダメだよねって言う。なんでかって言うと生活必需品とそうでない物の線引きってものすごく難しくて、ヨーロッパではずっとそれで揉めてきてる歴史っていうのがあるんで、普通にそういうこと知ってる経済学者は軽減税率なんてやるべきではないという意見になるんですがそれ以外の事、消費税増税すべきかどうか、財政再建すべきかどうか、日銀が国債保有したらチャラになるかどうか、これらはもう全部真っ二つに意見が半々ぐらいに分かれちゃうんですね。全くあてにならない集団ですね。

中島: 日銀が株を買う事に関してはどう思います?

井上: あんまり筋の良い政策ではないと思ってます。やっぱりなるべく公的な機関である日銀なりが民間のやる事には口を出さない方が良くて、ま、国債でも買ってりゃいいんじゃないですかっていう話なんですが。ただ、国債を幾ら買い取っても、政府の方がその分支出してくれないとお金が世の中に出回ってこないという状況で、苦肉の策として、「まあ、ありかな」ぐらいには思いますね。株を買えばですね、日銀が自分でお金を発行して株を買う訳ですからその企業なりにお金が行くわけですね。それによって出回るお金の量ってのは増えていくんで、ヘリコプターマネーみたいなことを企業に対してポンってやっちゃってるんですよね。家計に対してではなくて。それは、余り筋のいいことではないけども、まあ、ありかないかと言ったら、デフレ脱却の為にはま、しょうがないかな・・・っていう風に思いますね。

中島: 今仰った様に株を買うっていうことは会社だったり株主は得するけど、一般の、株を持ってない人は得しない訳ですよね。それに対してベーシックインカムであれば全員が得するので。

井上: そうですね、お金を発行した時に得られる利益のことをですね、貨幣発行益という風に言うんですけども。あの例えば、昭和61年に昭和天皇在位60周年記念コインての発行をしてですね、これ10万円の額面なんですけども、金としての価値は3万円しかないんですね。じゃあ7万円どうしたかって言うとそれは結局政府の収入になっちゃうんですね。ま、そういうのを貨幣発行益とかシニョレッジって言ったりするんですけども、1万円札だと20円しか発行するのにお金かかんないんで、後の9980円は貨幣発行益という風になります。貨幣発行益の定義ってそうじゃないだろって結構専門的な人から突っ込みがありそうなんですが、私はそう考えていいかなと思っています。そうするとですね、この貨幣発行益を誰が得るのかっていう話なんですが、さっきみたいに企業の株を買ってしまうと企業が貨幣発行益を得てしまうということにほぼなります。なんですけども、それってちょっと不公平じゃないのっていうのがあるんですね。そうじゃなくて国民全員に均等にこの貨幣発行益を分割して配当すべきじゃないかっていう主張を私は持っていて、そういうのを国民配当とか国民ボーナスなんていう風に言ったり、あるいは貨幣発行益の国民配当と言ったりするんですが、そういうものをですね、ちょっとずつ国民全員に配るっていうのは割とやるべき事かなという風には思っています。ただこの辺になってくると、かなりちょっと経済学者の中でも「井上っていうの、最近なんかぶっ飛んだこと言ってるよね」っていう風な評価にはなってきちゃいます。はい。

中島:でも僕は思うのは、例えば少子化の問題もそうじゃないですか。ベーシックインカムになると要は国民一人当たりいくら出る訳で、子供たくさんいると収入多い訳ですよね。

井上: そうですね。はい。

中島: だから、子供が5人いれば7万円といったら5x7=35万円入ってきます。じゃ、もっと作れって話に・・・・・なんかあまり単純化しすぎてるかもしれないけど何か良い、良い様に思う。

井上: やっぱり子供がですね、あまり皆さんが作らないっていうのは今いろんな要因があるんですけども、はっきり言えるのはやっぱりお金がないから作らないっていう人は結構いるんですね。まずはお金がないから結婚できないってこともあるんですけども、結婚してる夫婦でもうちは苦しいからって言って一人で我慢しようって言う、子供は一人だけっていう、僕の友達でも、お前絶対いっぱい稼いでるだろっていう人までですね、ある IT の結構大企業のグループ会社の社長やってるんですけど、絶対持ってると思うんですけども一人しか子供作れないとかっていうんですよね。でも本当にそうであればですね、子供限定のベーシックインカムっていうのはまずやるべきかなって、まあ子供手当てっていうのが昔、民主党時代にありましたけど、あれをもうちょっとちゃんとやるべきかなと思っていて。私は理想としてはもう子供からご老人まで全員に配るっていうことなんですが、ただ大人に配るとナマケモノにお金やるのは嫌だとかですね、結構色々という人はいますんで、その問題がクリアされるまでは子供限定のベーシックインカムっていうのはやったらどうかなっていう風にはちょっと思ってますね。

中島: そろそろ時間が近いので・・・
一番ベーシックインカムが好きなんだけど気になってるのはベーシックインカムっていうのは、私の理解では非常にコストの安い経済政策だと。要はその審査とか要らないですから、役所の人数も減るわけです。でも、それをやろうとすると実は霞ヶ関が猛反対するんじゃないかなと。霞ヶ関どころかいろんな補助金、例えば私立助成金なんてのは典型的なもので、あんなものはもういらないわけですよベーシックインカムをやれば。でもそれを辞めるとなると、私立大学,高校は全員反対するでしょ。それからその先ちょっとその例えば、老人ホームに落ちている養老保険だとか、後下手すると農林水産業に対する補助金とかもベーシックインカムをやれば、別にその低所得者の中でも儲からないからとか言う人も気にしなくて良くなる訳で。そういうのは全部廃止しないとベーシックインカムの意味は僕はないと思ってるんですけど、そう言うと多分反対する人が多くて、だからこそベーシックインカムはできないんじゃないかなという危機を僕は持っていますが、それについてはどう思われますか?

井上: その可能性ありますね。今、私学助成の話ありましたよね?私はあの駒澤大学という私立大学に勤めていながら私学助成とかホントにやめてほしいと思っています。何でかと言うとですね。あの「こういう改革をしたらの助成金増やしますよ」みたいな改革案を提示してくるんですけども、現場の教員から言わせると「そんなことやったでしょうがないだろう!」って思うんですよね。そうなんですけど、お金欲しさに無駄な会議をし、無駄な報告書を作るということを今大学では一杯やってるんですね。その為には・・・まぁそれだけじゃないですけど、大学の先生の研究時間ってのは減っていて、特に理系の先生なんかの研究っていうのをちゃんとやらないと日本の科学技術力が伸びていかないんですけども。そういう理由でも科学技術力がどんどん日本では衰えていて、もう30年経つと日本からノーベル賞とか出なくなるなんて事はこの間の本庶(ほんじょ)さんも言ってますし、  2年前ノーベル賞もらったあの大隅さんとかも言ってますけど。今はそうやって日本の科学技術力がもうガッタガッタに衰退しているという状況ですね。それで、そんな文科省が・・・現場の先生から言わせれば、「そんな改革してもしょうがない」っていう案を提示してくる背景には経団連とか財務省とかが控えていて、まぁその辺の複雑な権力構造っていうのがあるのが、私は問題だなと思っていてて。自分たちがそういう権力を発揮したいが為に裁量的なお金の使い方っていうのを官僚とか政府っていうのはしたい。何か裁量の部分っていうのは私は可能な限り無くしたいんですよね。裁量があるところにはだいたいパワハラと不公平っていうのがやっぱ蔓延るんですよね。そんな裁量権っての使えば、この間文科省でですね。役人さんが子供を裏口入学させたとか言って問題になってましたけども、裏口入学しているかどうか?って、もうどうでも良いんですよ。別に、アメリカだって裏口入学なんて幾らでもありますし、日本で全体の1%や2%の人を裏口入学してたってどうでもいいじゃないか?と思うんですね。あの問題はその背景にあるところが一番大事でですね。結局それだけの権限が官僚に握られちゃってるって言うことなんですね。そういう官僚が私立大学、まぁ国立もそうですけどに対してですね、不当な影響力を行使してるって言う背景があって。実はそっちの方が私は大きな問題だという風に思っています。そういうものを無くすためにも「ベーシックインカムっていうのは導入されるべきかな」なんていう風には思ったりします。

中島: ありがとうございます。私もその辺はすごく同意しているので、どうやって変えたらこれから考えていかなきゃいけないけど、結局、政治家を誰かそういうことを理解してくれる人を立てて、応援するしかないかなと思っていて、私は自民党は嫌いなんだけど、そうは言いながら自民党がいないと動かない国なので、じゃあ誰をサポートしたらいいかなって考えて、ひょっとすると小泉さんかな、みたいなことをちょっと思っています。ただ小泉さんと会ったことがないので、是非一度お会いして、どんな人物かを見て、もし理解していただけるなら、小泉さんあたりを説得して、そういう方向に持っていけると日本は変えられるんじゃないかな、みたいな期待はちょっと持っていますので、是非紹介してください。ということで、今日はこんな感じで。ありがとうございました。

井上:  ありがとうございました。