Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋 書き起こし その6

2018年10月19日(金)に開催された「Invent or Die - 未来の設計者たちへ:第二回 中島聡 x 井上智洋」の書き起こしです。

ソフトウェアエンジニアである中島聡と、マクロ経済学者の井上智洋氏(駒澤大学)が、既に始まっている情報技術の飛躍的な革新が、経済や産業、社会全体に及ぼす影響やインパクトに関して、テクノロジーと経済の両方の側面から議論しました。

司会:井上先生ありがとうございました。今一度皆様大きな拍手の方をお送り下さいませ、ありがとうございます。すみません、話がすごく盛り上がっているんですけれども時間の方が少々短くて・・・またぜひ第二弾とかも考えて頂けたらと思いますので、よろしくお願い致します。

井上:ええ、まぁ社会保障制度としてやりましょうっていう話と両方あって、両方実施すべきだと思うのですが、貨幣発行益を配当するというのは、天然資源が採れる国、例えばイランなんかは年間国民に1人ずつ180万近く払っているらしいんですね。それは公的な収益があるからそれだけの国民に対する配当が出来るんですね。じゃあ日本は天然資源が無いから何も出来ないかと言うと、やっぱお金って常に増やし続けないと経済は成長しているわけだから。例えば子供が成長していってその分血液を増やさないといけないのと同じように、お金ってのは経済の血液みたいなものなのでお金も増やしていかないといけない。そうしたらお金を増やしたときのそのお金を誰が受け取るかっていう問題が出てきて、結局お金を受け取る人が貨幣発行益を得るわけですけれども、それって国民全員が均等に得るべきじゃないかって思っていて、では貨幣発行益は誰のもの?っていう議論が今までほとんどなされてなかったんですけど、それって国民のものにしないとおかしいんじゃないか、っていうのが私の意見です。

 あともう一つ、税金をベーシックインカムの財源にするということを正当化するのはかなり難しい話で、子供たちだけだったらまずはクリア出来るかもしれない。子供というのは、これは実は自民党や旧民主党でも意見が分かれているのですが、子供というのは家族で育てるものか、社会全体で育てるものかいうことです。私自身は無党派で別に何党でも何でも良いんですけれど、社会全体で子供を育てるって観点はもう不可欠だなと思っていて、そういう視点を持たないと少子化というのは解消出来ないと思ってますので、少なくとも子供限定のベーシックインカムっていうのは社会で子供を育てましょうって理念からは引き出せるかなと思っています。ただ大人の怠け者にまで配るとなると、かなり反対というのは多くなると思うのですが、私は怠惰であるということ自体も一種のハンディキャップだと思ってます。ですが・・・その話をちょっとすると長くなってしまうので、まぁそういう主張もあるんだなっていう程度にとりあえず受け止めて頂ければなと思います。

司会:中島さんは何かコメント等ございましたら・・・

中島:まぁ多分結論的には同じなんだろうけど、私のベーシックインカムに対する考え方は、割と昔のSFに出てきたようなユートピア的な世界、労働はロボットがしているから人間は遊んで暮らせるっていう未来が、まぁユートピアとして来ても良いわけですよね?ただ、それに至る過程で分かってきたのは、そういう世界は普通にはやってこないよと。その前に激しい貧富の差が起こると。それはもうアメリカで証明されていて、要はユートピアが来る前に激しい貧富の差が起こるわけですよ。一割の、ひょっとすると1%の人がそういうロボットとかを作る立場。投資家であり、ぼろ儲けをして他の人たちは職がないという世界が来ちゃうわけですよどうしても。それが起こると何が起こるかというと、民主主義で全員が平等に票を投票するので、結局「そういう世界は嫌だ」とか、「あんな金持ちはやっつけよう、殺してしまえ」みたいな激しい政治家が出てきて、無茶苦茶な世界が起こるっていう危機感を僕は持っていて、それを止めるには要は「ユートピアを加速する」しかなくて、金持ちの金を引き剥がして貧乏な人に渡すしかないわけですよ。で、その方法として高い税金をかけて配るというのも一つだけど、それとは別に貨幣を毎年発行することによって持ってる人たちのお金を薄めて全員に配る。それによってユートピアを実現しようという方が、私としては分かりやすいですね。まぁ多分結論としては同じなんだけど。

井上:そうですね、今ベーシックインカムを導入するとなると、私みたいな話になっちゃうんですが、将来AIやロボットが発達してきて、ベーシックインカムを正当化出来るかと言ったら、そしたら中島さんがお話ししたような内容になるという点では一緒です。

司会:よろしいですか?どうしましょう、もし…ちょっと時間が、あ、じゃあ(質問者が挙手)、はい。

質問者:消費者で年金が色々大変だとかいうことはよく分かるんですけれど、人口がどんどん増えていくとやっぱり資源が有限なので色々大変だよねっていう考え方もあるかなって思うんですけど、やっぱり急激に変化しないかんじで成長していく方が後々としては良いんでしょうか。それとも経済学と同じでちょっとずつ増えていった方が良いんじゃない、みたいな。(井上:それは子供の数?)子供の数ですね。

井上:そうですね、子供の数はちょっとずつ増えていった方が良いと思ってまして、これからAIやロボットが人間の代わりに働くようになるので、あんまり直接生産活動に労働者の頭数が必要とは私は実は思っていないんですね。そういう観点からすると資源を分け合うという意味からしたら、もう人数は少なければ少ないほどいいんじゃないかっていう人もいるんですね。ただ、今の中国を見てても分かるように、結局これからは人数が少なくても良いんですけれども、頭脳を持っている人というのは大事だと思っているんですね。労働者の頭数をわーっていっぱい揃える必要は無いんですけれども、まぁ今戦争がまさにそうなっていて、国民全員を徴兵して戦う必要って全く無くて、高度な訓練を受けた少数の専門的な軍人がいれば戦争に勝てるっていうそういう時代なんですね。それが経済でも同じことが起きてしまうと思っていて、頭脳を持った少ない人数でもってどんどん価値を生み出しちゃうっていう「頭脳資本主義」と私は呼んでいるんですが、そういう時代がやってきてしまうというふうに思っているので、じゃあ直接労働者の頭数は少なくても良いじゃないかって話になるんですが、ただその頭脳を生み出す母集団が結局多い方が良いということがあってですね、それでIT企業の時価総額ランキングを見ると、全20社の中で中国の会社が9社も入っているんですね。それだけですね、すごい起業家が中国に生まれているというのは色々な要因があると思うんですが、単純に人口が多いってのもあると思うんですね。それだけ日本の10倍以上の人口がいれば、それだけ凄い起業家も出てくるっていう話なんですね。まぁそういうところから考えて、優れた頭脳を生み出すためにも人口はやっぱりそんなに減らない方が良いというふうには思っています。

司会:中島さんからは何かありますか?

中島:大丈夫です。ちょっとオンラインで1つ質問が入っているのでこれだけちょっと最後に答えると「ベーシックインカムを導入すると人間の幸福度はどうなるのでしょう?」、まぁその働きがいとかやりがいとかね、っていう質問が来てて、それは僕は結構気を付けなければいけないなと思っています。というのはアメリカで見てると実は鬱病になっている人は結構金持ちに多かったり、金持ちの奥さんとかね、多いんですよ。自分が必要とされてないってなると人間は鬱になりやすいので、そこは気を付けなければいけなくて、ただ僕は期待してるのはボランティア活動だったり創作活動だったり、例えば音楽で食っていくとか今は無理じゃないですか、でもベーシックインカムがあれば出来るわけで、そういう音楽や絵とか、趣味に生きる人みたいなのが増えてそこで幸福感を得てくれれば良いなとは思います。またちょっとユートピア過ぎるかもしれないけど。

司会:井上先生はいかがですか?幸福とか・・・

井上:そうですね、まぁ大体中島さんが仰った通りなんですが、特にですね、今の時代にそういうのが多いっていうのは、なんとなく人間って役に立たなきゃいけないとか必要とされてないといけないという気持ちが近代人には強すぎると思ってるんですね。昔からそうかというと貴族とかいっぱいいたわけですよね。じゃあ貴族はみんな鬱病になったかと言うと別にそうでもないと思うんですね。だけど近代においてはなんとなく必要とされていないと具合が悪くなってしまうということだと思うんですが、別に世の中の役に立たなくたっていいじゃん?っていう開き直りはこれからの時代に必要な価値観だと思ってまして、別にニートでも良いじゃないですかって話なんですよね。どうせみんな将来は多く人がニートになると思っていますんで僕は、AIやロボットに働かせるというまぁもうちょっと・・・かなり遠い未来かも分からないんですけれども、そうなると思っているんで。もちろん社会貢献するのは良いことですけれども、別に貢献出来なくてもOK、趣味に生きるのもOK、っていう感じでですね、まぁあとはそういうボランティア活動をしたりとかですね、何かそういうことで賃金労働っていうものにそんなに囚われなくても良いんじゃないかなというふうには思っていますね。

司会:はい、ありがとうございます。すみません議論は尽きないですけれども、一旦この辺で締めさせて頂きたいと思います。では第一部の対談はこちらで終了させて頂きます。本日は井上先生、中島さん、どうもありがとうございます。もう一度拍手をお願い致します。