書評『「空き家」が蝕む日本』

『「空き家」が蝕む日本』長嶋修著・ポプラ社

文責:小津豪志

-人生で一番高い買い物の背景にある問題とは?-

現在の日本の住宅事情が分かる度

★★★★☆

不動産の世界に身を置くも業界の慣習に納得できず、会社を飛び出し事務所を立ち上げた著者による作品。業界にいる人間だからこそ見える日本の住宅の問題点を、しっかりとあぶり出している。

「これまでの業界に風習に逆らい、風穴を空けてやる」というスピリットは称賛に値する。問題に気づかない者、問題に気づくも行動しない者。著者は、問題に気づき行動した者だ。住宅問題については買うにせよ、借りるにせよ皆が詳しくあるべきなのだが、実際には知らないことだらけということが、この本を読むことで見えてくる。

日本の住宅問題の根本の原因は、知識がないことに起因している。住宅を購入する側はもちろん、販売する側も住宅について詳しくないことには驚いた。

実は、不動産価格の査定は誰でも行うことができるとのこと。筆者は、入社4日目で査定を行っている。価格の決め方は杜撰そのもの。建物の劣化具合、品質は確認せず築25年経過していれば評価額ゼロ。地価については駅からの距離、日当たりなどは勘案するも地盤、地質に関しては考慮しない。そして、客観的に価値を検証していない事例を寄せ集め、それらを基準に価格を決定している。「適当」という言葉がピタリと当てはまる。

アメリカに目を向けると、まったく違った様子が見られる。住宅診断士とよばれる社会的にも地位が高い専門家が、徹底的に住宅の評価を行う。売買価格のみならず、登記情報から浸水履歴まですべてのデータが一元化された情報をもとに総合的に判断を下す。購入後どのくらいお金がかかるかまで教えてくれるのだ。

日本人は価格が適正かも分からないまま、マイホームを人生の目標に据えて購入している。

日本ではマイホーム志向、新築志向が当然とされているが、なぜこのような考え方が根強いのか。経済の観点からそれが見えてくる。3000万円の新築を購入することで、約6000万円の経済効果を生むとのこと。新しい家を建てることで、経済を回せることがよくわかる。

国民に家をたくさん建たせて新築信仰を定着させた人たち(日本政府?不動産業界?)は天才としか言いようがない。

さらに深刻なのは、空き家問題である。

日本の空き家率は40%を叩き出すと予想されている。単純に考えると、ほとんどの家でお隣さんがいない計算となる。

空き家率が30%を超えると、犯罪の温床になるとされる。放火、空き巣などを原因に町が荒廃してくるためだ。東西ドイツ統一後、東から西へ多くの人が流れ、東ドイツの街が荒廃し社会問題となったという。そのような状況に現在の日本は向かっているのだ。

また、更地のままより家を建てておく方が税金が少なくてすむ。新築に補助金が偏りすぎている。賃貸住宅は補助金などが出ないため狭く貧弱など話が続いていく。詳しく内容は本文に譲る。

バブル期に建てた住居の築年数が、住宅価値が0となる25年に差し掛かっている。日本の住宅問題は待ったなしである。2014年初版の本のため古くなっている部分はあるかもしれないが、出版当初よりも住宅問題が進行していることは明らかである。問題解決に向け、法改正など問題は山積みだ。しかし、何よりもまず取り組むべきは私たち一人一人が、住宅についてより詳しくなる?ことなのかもしれない。