書評『ハーバード白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう+東北大特別授業』

『ハーバード白熱教室 世界の人たちと正義の話をしよう+東北大特別授業』マイケル・サンデル著・早川書房

文責:小津豪志

脳みそのトレーニング度
★★★★★

数年前に大ブームとなった、ハーバード白熱教室。シンギュラリティソサエティの推薦図書は「これから正義の話をしよう」(マイケル・サンデル)だが、自分が天邪鬼であるという理由から私は同じ著者のこちらの作品を選んだ。

嘘をついた。選んだ理由はきちんとある。それは東日本大震災を議題として取り上げていることだ。サンデル教授の取り上げる話題はトロッコ問題(ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?)など、どこか遠い話をしている感が私の中で拭えなかった。

東日本大震災は私の人生のターニングポイントにもなる出来事であり、自分事として捉えられる。だから明確なイメージを持ちながら議論を読み進められると思い、本書を選定した。

東北大学にて、原発などに関して当事者が真剣に話し合った様子が記録されている。

日本人は自分の意見を言わない民族とされているが、議論はまさしく「白熱」した。

"人々は何を信じればいいのか悩んでいます。"

これが被災者の全てを物語っているように感じた。

「仮置き場はどこにおく?」

「自主避難は自己責任?」

など、現実の問題としてあるテーマを参加者が思いを伝えている。それぞれの本音がぶつかりあっていた。

本書では『「世界の人たちと」正義の話をしよう』と銘打ってあり、各国にサンデル教授が赴き、それぞれの場所で講義、議論を交わした。日本と同様、今ある自国の問題について議論が執り行われた。

インド:性差別(バスの車内で23才の女学生がレイプされ殺される事件があった)

ブラジル:デモ活動(公共機関をないがしろにしながらオリンピックのスタジアム建設をしていた)

韓国 :兵役(19歳以上の男性を対象に義務付けられている)

その他に取り上げたられた議題を記しておく。ぜひ時間をとって自分の考えをまとめてみることをおすすめする。

「ダフ屋行為、チケット高額転売はいけないことか」

「成績アップのためにお金、インセンティブを与えることは正しいのか」

「大雪が降った際、需要の高まるスコップの値段を引き上げるのは妥当か」

「お金を払えば、列への割り込みは許されるのか」

これらの課題はどれも100%正しい答えはない。あるのは自分の意見だけだ。善なのか悪なのか。社会としてそれは受け入れられるのか。線引きはどこに設けるのか。

他人と違う意見を持ちながらどこまでなら妥協を許し、共存していくか、真摯に向き合う。脳をフル回転させながら読み進んでいった。

最後に私の主張を述べて結びとする。

私が不思議に思っていることが自分の頭で考えない人があまりに多いことである。人に判断を委ねている。しかし、何か問題が起こると「なぜなんだ!」と怒り狂う。

当然、専門ではないことは誰かに身を任せるという判断は必要であるだろう。しかし、何も考えずにフワッとした気持ちで選ぶのは危険である。これは先の震災で多くの人が学んだはずだ。

自分で考えるための材料を集め、自分だけの判断基準を持つ。最終的にはあらゆる事態が起きても判断が下せるようになること。その一助としてマイケル・サンデル教授の講義は大いに活用できるのではなかろうか。