書評『社会不適合僧侶の究極ミニマル生活 くるま暮らし。』

『社会不適合僧侶の究極ミニマル生活 くるま暮らし。』静慈彰 (著)・飛鳥新社

- 『くるま暮らし』はこれからの新しい生き方かも知れない -

文責:西宮大貴

シンギュラリティソサイエティでは次世代の住居や移動手段についての議論が活発に行われており、実際にそれを実現するためのプロジェクトが発足している。

"bus2.0"プロジェクトでは地方での乗合バスサービスの効率的な運用をシミュレーションするアプリがリリース済みであり、それ以外にもノマドワーカ向けの住居設計、移動手段の目的化といった新しい社会創造に向けて着実な進展が見られる。そういった近未来の住み方の一つとして車上生活というものに興味があり、本書を手に取った。

真言宗の僧侶である著者は、バンに最低限の生活物資を詰め込み、全国を旅しながら生活しているという。普通の都会暮らしをしている身からすると想像できない生活だ。しかし読み進めていくと、心地の良いベッド、自炊設備など、想像とは異なる充実した暮らしぶりが窺い知れる。風呂やトイレはどうしているんだろう? 電気は? など、こちらが疑問に思ったことを聞いていたかのように説明が入る。「それはな…」と話し出す著者の笑顔が目に浮かぶ。

著者自身もミニマリズムやノマドに言及しているが、現代はテクノロジーの進化を原動力としたライフスタイルの変化が進んでいる。「シェアリングエコノミー」で物を買う経済活動から使う経済活動へシフトしている。自動運転技術が進めば、生活空間を自動運転車内に作り、家を持たない暮らしができるのではないかといった発想も出てきている。著者の暮らし方は、そんな未来的な暮らしを、現代の利用可能なテクノロジーの範囲で実現しようとする試行錯誤のように映る。

変わって後半は著者の半生にフォーカスを当て、なぜこの暮らしに至ったかのネタばらしを読んでいるかのよう。優等生としての人生を捨て、僧侶としての順当なキャリアを捨て、妻との暮らしを捨ててくるま暮らしに行き着いている。そこには偶然や意図しない結果もあったであろうが、この暮らし方にはそれを形作る経験があり、それにより形成された彼なりの哲学があったことが理解できる。

「普通」に縛られたくないと思ったら、彼のような生き方をしてみるのもいいかも知れない。しかしこれは一つのサンプルでしかなく、我々は自分自身の生き方を自分で見つけるしかないのだ。