普通の小売業がAmazonに負ける理由

Kroger は、シンシナティに本社を持つスーパーの大手(Walmartに続く2番目)で、Fred Meyer、Ralphs、QFC などのブランドのスーパーも買収の結果、所有しています。

Amazon が Whole Foods の買収により、生鮮食料品市場に進出したことに Kroger が危機感を覚えているのは当然です。特に Amazon Go のようなテクノロジーを使った「レジなしコンビニ」は、普通のスーパーにとっては大きな脅威で、それに対抗するために Kroger が導入したのが「Scan, Bag, Go」と呼ばれるセルフレジのシステムです(Kroger takes speedy 'Scan, Bag, Go' tech nationwide )。

私がふだん使っている QFC でもそのシステムが導入されたのですが、なかなか試す時間がなく、ようやく先週になって、初の試みをしてみました。

結果は惨憺たるもので、最初の買い物リストを作るまでに、ログインを4回しなければならず(その度にパスワードを打つ必要があります)、クレジットカード番号を登録したところでアプリケーションがクラッシュしてしまいました。

結局、普通のレジに並んで買い物をすませて帰りましたが、この経験を通して言えることは、やはり「経営陣がソフトウェアのことを分かっていない会社には、この手の戦いは非常に難しい」ということです。

少しでもソフトウェアのことが分かっている経営者であれば、自らアプリのインストールから自分で行い、私のような体験をした挙句「こんなシステムじゃあ使えない、やり直せ」と言うはずです。しかし、テクノロジーに弱い経営者だと、アシスタント役の人がアカウントの登録まで全て済ませて完璧に動く状態にした上で、「どうぞ試してください」とやるため、この手の致命的な欠陥が見過ごされてしまうのです。

こんな話をすると、「それはQAチームの問題だ」と言う人もいるし、確かにそれは正しい面もあるのですが、QAチームがどのくらい真剣に仕事をするかどうかも経営陣の態度によって大きく関わるので、結局は、経営陣がどのくらい真剣に「ユーザー体験」の重要さを理解しているかどうかが、何よりも重要なのです。

ちなみに、Microsoft で Windows 95 の開発に関わっていた時に、もっとも多くバグを発見したのは、Senior Vice President としてシステム部門の総括をしていた、Brad Silverberg 氏でした。毎日のように、彼からバグが報告されて来るため、エンジニアはもちろん、QAチームもかなりピリピリした状態で仕事をしていたことを良く覚えています。

Brad Silverberg や Bill Gates のような人物が経営陣として関わっていたら、「Scan, Bag, Go」のようなひどいユーザー体験のシステムが世の中に出ることは決してありませんでした。こんなものが世の中に出てしまうこと自体、Kroger が Amazon とまともに戦える会社ではないことを示しています。