書評『人工知能と経済の未来』

『人工知能と経済の未来』井上智洋著・文藝春秋

文責:石木晶太郎

<概要>

本書は、人口知能の発達を見据えて、経済・雇用の形態をどうしていくべきかを論じた本である。

著者は、人口知能の発達において、2030年には汎用AIが人間の能力を超え、2045年には全人類の能力をも超えると推測しており、AIによる雇用喪失、AIが人智を超え暴走する可能性などマイナス面を説明した上で、汎用AIによって爆発的なGDPの拡大が見込めるため、人類が労働をする必要はなくなるだろうと語っている。

次に本書では、AIの発達によって人がほとんど労働しない状況での経済・雇用の在りかたの理想形として、ベーシックインカム(BI)を取り上げている。

BIの導入に当たっては財源の課題などが世間で論じられているが、社会全体で考えた場合、一部の富裕層を除けばマイナスは発生せず、非常に優れたシステムであると紹介している。

<所感>

2016年の本だが、GNR(遺伝子、ナノ、ロボット工学)革命にて人の脳スキャンして脳を再現し、人の意識をプログラム化するというすることが21世紀中にできる可能性があるということに驚愕した。(キーワード:カーツワイル、全脳エミュレータ)。

また、汎用AIでは事務作業やタクシードライバーなどの職がなくなることは想像していたが、サービス業(皿洗い、理容師)などもなくなる可能性がある。さらに人の共感を得られない芸術・クリエイター職(デザイナー、音楽家)までもがAIにとって代わられる可能性があることがわかった(キーワード:ディープラーニング)。

そのようなAIに雇用が奪われる未来となるなかで、BIが紹介されている。

BIについては、比較的新しい経済概念で「政府による生活費の分配」程度にしか理解をしていなかったが、18世紀から存在する理論で、現段階で理論的に導入可能な経済制度であるという説明には、目からウロコだった。

汎用AIが発達し、BIが導入された世界で「AIが人間を駆逐するのでは?」、「電気がなくなったらAIが動かなくなるのでは?」などの不安要素は確かに残るが、AIは生命の壁が越えられていない状態なので「AIは人の手の中」ともいえる。

AIが人の能力を超えるシンギュラリティは必ず起こると推測されるし、全脳エミュレーターでAIが完成し、人と同じ感性を持ち、やがて人間自体不要になる未来が来るかもしれない……が、未来がより豊かに、そして平和になり得るのは、今を生きる人の願い・努力次第だと思う。

BIによる豊かな経済圏で皆が幸せになり、邪心なくAIの開発が進むことを願う。

★★★★☆

<プラスポイント>

 →BIについて偏見がなくなって、より評価できるようになった。

 →間違いなく賢くなった(気のせいか)?

<マイナスポイント>

 →BIの導入方法に当たっての知見が知りたかった。